47. 空白の効用

翻訳チームのメンバーの一人が、「今回の原稿(英文)は段落がなくてポイントをしぼるのが難しい」と話してくれた。数行のものならともかく、段落の区切りがない文章は読みにくいものだ。視覚的にも見にくいし、意味も、逆接の接続詞や副詞が省かれていたりすると、文脈を追うのも怪しくなる。
段落の切れ目の、一行または数文字分の空白は、文字はないが意味はある。私たちは何気なく読み取っているけれども、それは、ここから後は違う意味のかたまりに入ります、という明確なメッセージだ。

初級翻訳講座などで、課題の原文に長い段落があると、受講生が自分でいくつかの段落に分けて訳してくることがある。作業中は別として、仕上げるときは段落を勝手に変えてはいけない。空白を置いた、という意味は、言葉の選択と同じように、原文の作者の意図がこめられているからだ。

 

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